148.日本おとぎ噺 「あばれ絵馬(あばれえま)」
ある村に、若く美しい娘と、その娘を慕う真面目な若者がいた。だが、庄屋の息子も娘を欲しがり、無理やり縁談を進めようとする。娘と若者は困り果て、村の社に祀られる神へ「どうか二人の思いを守ってください」と願をかけ、絵馬に想いを書き記して奉納した。夜の社には松明の灯が揺れ、切実な祈りが響いていた。

ところが翌朝、庄屋が奉納された絵馬を見つけ、「この縁談は許さぬ!」と怒り、無理に絵馬を壊そうとした。すると不思議なことに、絵馬が突如として宙に浮かび、鳥のようにバタバタと暴れだした。村人たちは驚き、社の前に集まっては声を失う。絵馬は庄屋に襲いかかり、その衣を裂いて空を舞った。村人たちは「神の怒りじゃ!」と恐れ、誰一人止められなかった。

暴れまわる絵馬は村中を飛び回り、庄屋の屋敷の瓦を打ち砕き、家財を散らした。庄屋は震え上がり、命からがら逃げ出す。村人たちは「神が二人の純真な想いを守ってくださったのだ」と悟り、二人を守ろうと決意する。社に集まった村人は皆で手を合わせ、絵馬に「どうか鎮まってくだされ」と祈りを捧げると、不思議なことに絵馬は静かに地に降り、再びただの木の板に戻った。

庄屋は深く反省し、二人の仲を妨げることをやめた。村人たちは祝福し、娘と若者は晴れて夫婦となる。社の神威に守られた二人の縁は固く結ばれ、村では「あばれ絵馬」の話が長く語り継がれた。人々は以来、社をより敬うようになり、絵馬は誠心誠意の願いを託す神聖なものとして重んじられるようになったという。
