「私の与太話」「略語 」
この頃、新聞でもテレビでも、聞いたことのない略語が平気で出てくる。アタオカだの、エモいだの、何だのと、まるで暗号合戦だ。こちらは日本語を読んでいるつもりなのに、気がつくと外国語の試験でも受けている気分になる。年を取ったせいかと思ったが、どうやら若い者同士でも、意味を分からず使っているらしい。

もともと仲間内だけで通じる言葉なら、それはそれでよい。学生の隠語も、職人の符丁も、昔からあった。ところが今は、その内輪言葉をマスコミまでが得意げに取り上げる。「いま若者に大流行」などと言われても、流行っているのは言葉より、分かったふりをする顔の方ではないかと思えてくる。

先日、孫に向かって「最近の略語は困る」とこぼしたら、笑いながら「おじいちゃんだって略語を使ってるよ」と言われた。NHK、ATM、USB、LED――言われてみれば、こちらもずいぶん平気な顔で並べている。昔の人から見れば、これだって十分にわけのわからぬ言葉だったに違いない。

なるほど、言葉というものは、仲間内で生まれ、便利だから広まり、しまいには誰も不思議と思わなくなるらしい。そう考えると、腹も少しは立たなくなる。とはいえ、意味も知らずに得意顔で使うのはごめんである。そこで私も一つ、新しい略語を考えた。「WW」――“わからん・わからん”である。
