134.日本おとぎ噺 「芋ほり長者(いもほりちょうじゃ)」
むかし、貧しいけれど正直者の若者が村に住んでいました。畑も小さく、暮らしは苦しかったが、働き者で人に優しく、村人からも好かれていました。ある日、彼は畑の芋を掘ろうと鍬を手に、まだ朝露の残る畑に出かけました。ところが掘り出した芋は、ずるずると根が切れずに伸びていき、いくら掘っても終わらないのです。

若者は夢中になって芋を追いかけ、ついには畑の端を越え、野を越え、山を越えて掘り進んでいきます。やがて暗い穴にまで続いており、恐る恐る潜っていくと、そこは不思議な世界。金銀の器が並び、光り輝く宝の山が眠っていました。若者は驚きながらも、ほんの少しだけ芋を引き抜き、宝はそのままにして帰ってきました。

村に戻った若者は、掘り上げた芋を鍋で煮て皆に分け与えました。不思議なことに、その芋はどれだけ食べてもなくならず、村人たちを飢えから救いました。この話が広まると、欲深い隣の男が同じように芋掘りを試そうとしました。しかし彼は宝を見つけるやいなや、欲に駆られて抱えられるだけ持ち帰ろうとしたのです。その途端、穴は崩れ、宝は砂に変わって消えてしまいました。

こうして正直者の若者は「芋ほり長者」と呼ばれ、村の人々と共に仲良く暮らしました。一方、欲深い隣人は何も得られず、かえって笑い者になったのです。人々は「欲をかかず、正直に生きる者こそ本当の長者」と口々に語り継ぎました。芋は実りと恵みの象徴として、人々の心に深く残ったといいます。
