147.日本おとぎ噺 「みやこ鏡(みやこかがみ)」
昔、京の都に住む絵師がいました。彼は腕は確かでしたが、心に慢心があり、田舎の人々を見下す癖がありました。ある日、彼は「田舎者には鏡の姿も分かるまい」と笑い、旅先で出会った農夫に手鏡を見せます。農夫は鏡に映った自分の顔を見て驚き、「これは亡き父の姿だ」と涙を流しました。絵師は面白がりつつも、農夫の必死な様子に戸惑います。

農夫は鏡をどうしても譲ってほしいと懇願します。「父にもう一度会える道具だ」と信じ、米や野菜まで差し出して頼み込みました。絵師は困惑しましたが、田舎者をあざ笑う気持ちから高値をふっかけて売りつけます。農夫は大事そうに鏡を懐に入れ、家に持ち帰りました。

農家の家では、家族が代わる代わる鏡を覗き込み、それぞれが「自分の親だ」「亡き夫だ」と信じ込みました。やがて鏡は家宝となり、祭壇に飾られて毎日拝まれるようになります。近所の人々も集まり、次々と鏡を覗いては涙し、祈りを捧げるようになりました。絵師の軽い戯れは、村全体を巻き込む「奇跡の宝」となっていったのです。

後日、その村を再び訪れた絵師は、立派に飾られた鏡を目にして驚きます。村人は真剣な面持ちで「都から授かった尊い鏡」と拝み、幸せそうに暮らしていました。絵師は己の嘲笑が思わぬ形で人々の心を慰める宝となったことを悟り、深く頭を下げました。やがてその鏡は「みやこ鏡」と呼ばれ、長く村に伝わる宝となったのです。
