よもやま文庫/語り継ぐこころ

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たち・私の与太話・古典小説のダイジェスト版と挿絵です。 文も挿絵もChatGPTが作っています。ちょんまげの描写が正しくできません。お許しを。

『宮沢賢治の詩と心象風景』第六回「小岩井農場」4話 鳥の学校と農場の入口/全12話

100えんメガネ

【原文】

もう入口だ小岩井農場
(いつものとほりだ)
混んだ野ばらやあけびのやぶ
もの売りきのことりお断り申し候
(いつものとほりだ ぢき医院もある)
禁猟区 ふん いつものとほりだ。
小さな沢と青い木だち
沢では水が暗くそして鈍つてゐる
また鉄ゼルの青い蛍光
向ふの畑には白樺もある
白樺は好摩からむかふですなと
いつかおれは羽田県視学に言つてゐた
ここらはよつぽど高いから
やつぱり好摩にあたるのだ


【現代語訳文 】

もう小岩井農場の入口だ。
――いつもと同じだ。
野ばらやあけびの藪が茂り、
「物売り、きのこ採り、小鳥捕り、お断り」の札が立つ。
禁猟区。何もかも、いつもどおりだ。
小さな沢には暗く鈍い水が流れ、
青い木立の奥で鉄の柵が蛍光のように光る。
向こうの畑には白樺が立っている。
ここは高原だから、好摩のあたりと同じなのだろう。
かつて私は、そう県の視学官に話したことがあった。



【原文】

いったいどうだこの鳥の声
なんといふたくさんの鳥だ
鳥の学校にきたやうだ
雨のやうだし湧いてるやうだ
居る居る鳥がいつぱいにゐる
なんといふ数だ 鳴く鳴く鳴く
Rondo Capriccioso
ぎゆつくぎゆつくぎゆつくぎゆつく
あの木のしんにも一ぴきゐる


【現代語訳文 】

いったい何だ、この鳥たちの声は。
数えきれないほどの鳥が、あたり一面で鳴いている。
まるで鳥の学校へ迷い込んだようだ。
声は雨のように降りそそぎ、
地面から湧き上がるように重なってくる。
いる、いる、木にも藪にも鳥ばかり。
なんという数だ。鳴く、鳴く、鳴きつづける。
気まぐれな輪舞曲のように、
ぎゅっく、ぎゅっく、ぎゅっく、ぎゅっく。
ほら、あの木の芯にも一羽いる。



【原文】

禁猟区のためだ 飛びあがる
(禁猟区のためでない ぎゆつくぎゆつく)
一ぴきでない ひとむれだ
十疋以上だ 弧をつくる
(ぎゆつく ぎゆつく)
三またの槍の穂 弧をつくる
青びかり青びかり赤楊の木立


【現代語訳文 】

禁猟区だからだろうか、鳥たちがいっせいに飛び立つ。
――いや、禁猟区だからではない。
ぎゅっく、ぎゅっく。
一羽ではない。ひと群れだ。
十羽をこえる鳥が、空に大きな弧を描いてゆく。
ぎゅっく、ぎゅっく。
三つ又の槍の穂先のような翼が、
鋭く連なり、青空を切って弧をつくる。
その下では、赤楊の木立が
青く、青く、不思議な光を放っている。



【原文】

のぼせるくらゐだこの鳥の声
(その音がぼつとひくくなる
うしろになつてしまつたのだ
あるひはちゆういのりずむのため
両方ともだ とりのこゑ)


【現代語訳文 】

のぼせてしまいそうなほど、鳥の声が満ちている。
その響きが、ふっと低くなった。
鳥たちが、もう後ろへ遠ざかったからだろうか。
それとも、こちらの注意のリズムが変わり、
耳に届く音の高さまで揺れたのだろうか。
たぶん、その両方なのだ。
遠ざかりながら、なお重なり合う鳥の声。
空気の奥で、低く、かすかに鳴りつづけている。


×

非ログインユーザーとして返信する