131.日本おとぎ噺 「狐の相談(きつねのそうだん)」
むかし、とある村のはずれに、一匹の年老いた狐が住んでいた。若いころは化け術もうまく、人を驚かせては面白がっていたが、歳を取るにつれ術も鈍り、失敗ばかりするようになった。仲間の狐たちにも笑われ、すっかり自信を失った狐は、「もう化けるのをやめようか、それとも工夫すればまだやれるのか」と思い悩む。
そこである夜、年老いた狐は森の中に仲間の狐たちを呼び集め、「わしのこの先の身の振り方を相談したい」と語り出した。

集まった狐たちは、口々に意見を述べた。「人に化けるよりも、狸やイタチに化けたほうが楽ではないか」「いや、やはり人を驚かすのが一番の腕の見せどころだ」などと騒ぎ立てる。中には「人をだますのはやめて、山の守り神として人に祀られる道を探してはどうか」と進言する者もあった。
老狐はしばし考え、「なるほど、人をだますばかりが能ではない。だが、せめて最後に一度、見事な化け姿を見せてやりたい」と心に決める。

翌晩、老狐は村はずれに姿を現した。人々が田畑から帰るころ、白髪まじりの立派な僧に化け、ゆったりとした袈裟をまとって歩き出す。村人たちは驚き、「あのような僧を見たことがない」と頭を下げ、次々と供物を捧げた。老狐は誇らしげに振る舞ったが、やがて袈裟の裾からふさふさの尻尾がのぞいてしまう。子どもが「お母さん、あのお坊さんの尻尾!」と叫び、村人は大笑い。老狐は赤面して慌てふためき、森へ逃げ帰った。

森に戻った老狐は、肩を落として仲間に語った。「もう化けるのはやめじゃ。これからは山を守り、人に仏心をもって接しよう」。仲間の狐たちはうなずき合い、「それこそが立派な狐の生き方だ」と励ました。以来、老狐は化け術を封じ、森の奥で静かに暮らしたという。村人もまた「この山には狐の守りがある」と噂し、供え物を欠かさなくなった。
こうして、老いてなお道を見つけた狐の話は、里人に長く語り継がれたのである。

このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。