116.日本おとぎ噺 「天狗のこま(てんぐのこま)」
昔々、山あいの村に、こま遊びの大好きな少年が住んでおりました。ある日、少年は山奥へ遊びに出かけ、杉の木立の中でひときわ光る美しいこまを見つけました。見たこともない模様の描かれたそのこまは、ひとたび回せば宙に浮かび、まるで生きているかのように舞い踊ったのです。少年は夢中になってそれで遊び、やがてそれが天狗のこまであることに気づきました。

翌日、少年が村の広場でそのこまを回していると、大人たちも驚くようなすさまじい回転を見せ、村中の人気者となりました。するとある晩、山から風と共に天狗が現れ、「それはわしのこまだ。返すのなら、こま勝負をしよう」と告げてきました。少年はおそるおそるながらも勝負を受け、翌朝、山の中で天狗とのこま勝負に挑むこととなりました。

こま勝負は山の大岩の上で始まりました。天狗のこまは風を巻き起こし、火花を散らして激しく回ります。少年の番となり、祈るように回すと、こまは静かに宙に浮き、光を放ちながら舞い、天狗のこまの風を受けても揺らぎませんでした。やがて少年のこまが天狗のこまを打ち負かし、静かに地に落としたのです。天狗はその見事さに舌を巻きました。

勝負に負けた天狗は、潔くこまを少年に譲り、「そのこまで悪いことに使わぬよう、心正しく生きるのだぞ」と言い残して姿を消しました。少年はそれ以来、こまを大切にしながら、仲間と分け合い、正直に生きるよう努めました。そして村では、天狗のこまを持つ正直者の少年の話が、長く語り継がれたということです。

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