よもやま文庫/語り継ぐこころ

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たち・私の与太話・古典小説のダイジェスト版と挿絵です。 文も挿絵もChatGPTが作っています。時々間違えます。お許しを。

『宮沢賢治―光と風の生涯』第二部 信仰と創作の目覚め 第七章 永訣の朝

100えんメガネ

大正十一年十一月二十七日、花巻は冷たい雪に包まれていた。病床のトシは高い熱に苦しみながら、兄の賢治に「あめゆじゅとてちてけんじゃ」と頼んだ。それは、外の雪を取ってきてほしいという意味だった。賢治は妹の願いをかなえるため、急いで庭へ出た。



賢治は、きれいな雪を器に入れて病床へ運んだ。トシはわずかに口にし、兄を安心させるように静かにほほえんだ。賢治は、妹の苦しみが少しでも軽くなるよう願いながら、そばを離れなかった。外では雪が降り続き、部屋には家族の押し殺した声だけが響いていた。



トシの呼吸はしだいに弱くなり、家族が見守る中で静かに息を引き取った。賢治は妹の死を受け入れられず、何度も名を呼び、深い悲しみに沈んだ。しかし、トシが最後まで家族を思いやった言葉や表情は、賢治の胸に強く刻まれた。雪の朝は、永遠の別れの朝となった。



賢治は、妹の最期の言葉と雪の記憶を、詩「永訣の朝」に書き残した。悲しみを消すことはできなかったが、言葉に刻むことで、トシの優しさと命を永く生かそうとしたのである。この詩は一人の妹への哀悼を越え、大切な人を失ったすべての人の心に寄り添う作品となった。