『宮沢賢治―光と風の生涯』第一部 故郷と少年時代 第四章 盛岡高等農林学校
宮沢賢治は盛岡高等農林学校へ進み、親元を離れて寄宿舎生活を始めた。学校では農学、化学、地質学などを学び、岩石や土壌、植物の成り立ちに強い関心を抱く。野山で採集した石を調べ、顕微鏡や実験器具を使う毎日は、賢治にとって未知の世界を探検するような喜びに満ちていた。

賢治は仲間や先生とともに盛岡周辺の山や川を歩き、岩石、土、植物を採集した。石の層や地形を観察し、大地が長い年月をかけて変化してきたことを学ぶ。厳しい調査にも疲れを見せず、発見した鉱物を手に目を輝かせた。自然は研究の対象であると同時に、心を通わせる大切な友でもあった。

学問を深める一方、賢治は短歌や文章を書き、友人たちと文学や信仰について語り合った。顕微鏡で見る結晶、夜空の星、風に揺れる草木は、科学の知識と結びつき、独特の心象世界へ変わっていく。しかし家業を継いでほしい父との考えには隔たりがあり、賢治は自分が進むべき道を模索し始めた。

盛岡高等農林学校で得た知識は、賢治に大地と人間の暮らしが深く結ばれていることを教えた。卒業研究にも熱心に取り組み、土や肥料の知識を農民のために役立てたいと考えるようになる。科学、文学、信仰を別々のものとせず、すべてを人々の幸福につなげようとする賢治の生涯の方向が、ここで形づくられた。

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