よもやま文庫/語り継ぐこころ

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たち・私の与太話・古典小説のダイジェスト版と挿絵です。 文も挿絵もChatGPTが作っています。時々間違えます。お許しを。

『宮沢賢治―光と風の生涯』第一部 故郷と少年時代 第三章 信仰との出会い

100えんメガネ

賢治の生家では、朝夕に仏壇へ灯明をともし、家族そろって経を唱える習慣があった。幼い賢治も大人のまねをして手を合わせたが、祈りの意味までは分からなかった。それでも、金色に輝く仏具や静かに立ちのぼる線香の煙を見つめていると、目に見えない大きな世界が身近にあるように感じられた。



家の質屋には、暮らしに困った農民や町の人々が、大切な着物や道具を持って訪れた。父は決まりに従って品物を受け取ったが、賢治はうつむく客の姿を見るたび胸を痛めた。仏の教えが人を救うものなら、なぜ世の中にはこれほど苦しむ人がいるのか。少年の中に、信仰と現実を結びつけようとする疑問が芽生えた。



成長した賢治は、仏教の書物を読み進めるうちに『法華経』と出会った。そこには、人も動物も草木も、あらゆる命が尊く、いつか共に救われるという壮大な世界が説かれていた。言葉を追うほど胸は熱くなり、賢治は夜を忘れて読み続けた。信仰は家から与えられるものではなく、自分で選び、生き方として実行するものへ変わった。



賢治は、自分一人の幸福だけを願うのではなく、農民も動物も草木も、すべての命が共に幸せになる道を求めようと決意した。その思いは、のちに農業を教え、詩や童話を書く力となっていく。風や星、石や虫にまで心を感じる賢治の世界は、自然への愛と信仰が結びつくことで、さらに深く広がっていった。