46.『古典落語』「夢金(ゆめきん)」
江戸のとある町に住む船頭の男。寒風吹きすさぶ冬の夜、櫓(ろ)を漕ぎながらも生活は苦しく、銭のない日々が続いていた。そんな折、見知らぬ男が声をかけてくる。「急ぎで向島へ渡してくれ」と。しかも、賃銭は弾むと言う。喜んで引き受けた船頭だが、男の風体と、手に下げた大きな風呂敷包みが、どこか不穏で気にかかる。

舟を進める中、男は「この中には病気の娘がいて、寺へ納めに行く」と語る。だが、時折見せる冷淡な物言いや、沈黙に濁る空気が、船頭の胸にざわめきを呼ぶ。中身が「娘」とは言いながら、どうにも重さや形が妙で、生身とは思えぬ。心の中で「まさか金か…いやまさか」と打ち消すが、船頭の目は、風呂敷包みから離れない。

渡し終えた後も、その夜は眠れない。もしやあれは金だったのでは、と考え出すと止まらない。夢にまで金が現れ、ついに我慢できずに夜中、男の行き先だった寺へ足を運ぶ。案の定、寺に預けられた包みをめぐって一悶着起こる。寺男たちは驚きながらも開封してみると――中から現れたのは、やはり大金。盗みか、それとも…?

騒ぎを聞きつけたお上の手で調べが入り、男は他所で盗みを働き、その金を隠すために「娘の亡骸」と偽って運んでいたと判明する。船頭の通報と行動が功を奏し、男は捕まり、賞金も出ることに。庶民のしたたかさと勘の鋭さ、そして「金の夢」に取り憑かれた一夜が、船頭の人生を少しだけ変えた。江戸の闇夜に光ったのは、月でも灯でもなく、夢に見た「金」の話――。

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