108.日本おとぎ噺 「大歳の火(おおどしのひ)」
昔、雪深い山村では、大晦日の夜になると「大歳の火」と呼ばれる火を家々で焚き、豊作と無病息災を祈る習わしがあった。村人たちは藁を束ねた松明を用意し、家の軒先や田畑を回って清める。この年も村は雪に包まれ、白い息を吐きながら準備が進む中、庄屋の家でも若者たちが火を用意していた。

その夜、村人はそれぞれ松明に火を灯し、家の周りを回る。赤々と燃える炎が雪に反射し、厳しい冬を温かく照らす。火は「災いを追い払い、福を呼ぶ」と信じられており、皆の顔は明るい。庄屋の家では特に大きな松明が用意され、村中から集まった人々が次々と火を受け取り、自分の家へと戻っていった。

ところが、その夜、遠くの農家で火を運ぶ途中、強い風が吹きつけた。炎が勢いを増し、納屋の藁屋根に燃え移りそうになる。若者たちは慌てて雪をかけ、村人も駆けつけて必死に火を鎮めた。幸い大事には至らなかったが、「火は恵みと災いの両方を持つもの」と村人たちは改めて身を引き締めた。

火騒ぎの後、村人は再び庄屋のもとに集まり、無事に大歳の火を灯し直した。火は再び穏やかに燃え、村人の顔に安堵の笑みが広がる。やがて新年を迎え、村は平穏に包まれた。それ以来、村人は火を扱うときは細心の注意を払い、感謝を忘れずに大歳の火を受け継いでいったという。

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