『宮沢賢治・光と風の物語』第十八回「ひかりの素足」第5話 ひかりの素足の人/6話
一郎が楢夫を懸命にかばうと、どこからか「にょらいじゅりゃうぼん」という言葉が、風のように心へ届いた。一郎がその言葉を唱えると、鞭の音も泣き声も止まり、辺りは静まり返った。暗い野原の向こうには、黄金色の光が広がり始めた。

光の中から、立派な大きな人がまっすぐ歩いてきた。その人は裸足で、足は貝殻のように白く輝いていた。鋭い地面や燃える火の上を歩いても、少しも傷つかない。一郎たちは、その穏やかで力強い姿を、まぶしそうに見上げた。

光の人は「怖いことはない」と優しく語り、子どもたちの苦しみは、大きな徳の力に包まれているのだと諭した。恐ろしかった鬼たちも鞭を下ろし、静かに手を合わせた。光の人が楢夫の頭をなでると、兄弟や子どもたちの痛みは消えていった。

光の人が「地面は本当は平らなのだ」と告げると、赤く険しかった野原は、波一つない青い湖へと姿を変えた。遠くには美しい木々や建物が浮かび、暗かった世界は明るい安らぎの国となった。一郎と楢夫は、初めて恐れから解き放たれた。
