28.『古典落語』「金明竹(きんめいちく)」
大阪から江戸に商売に来ている古道具屋の旦那は、留守にすることとなり、女房と手代の与太郎に店を任せることにした。女房は気丈でしっかり者だが、与太郎はというと、どこか抜けている上に物覚えも悪い。それでも一人では心許ないと、仕方なくこの与太郎を留守番に残す。
そこへ、大阪からの使いがやってくる。店先で「主(あるじ)はおるかえ」と尋ねるも、応対に出たのは例の与太郎。大阪弁がまるで通じず、何を言っているのかさっぱりわからない。

大阪の使いは、大阪特有の早口の上に、商いの専門用語を交えてまくし立てる。「そちらの旦那様に頼まれて、難波の某が、金明竹一対、羅宇竹(らうだけ)三本、紫檀(したん)の煙管筒(きせるづつ)二挺――」と、道具の名を連ね、依頼された品の確認を伝えようとする。
だが、与太郎は内容を理解するどころか、聞いたことのない言葉の嵐にただ呆然。聞き返すも、ますます訳がわからず、大阪弁に混乱しながら、なんとか用件を覚えようと必死になる。

使いの男は業を煮やし、「こんなに聞き分け悪ぅて、どないなってまんねん!」と怒り出すが、与太郎は平謝りするのみ。やがて女房が戻ってきて事態を収めるが、与太郎は「確か…キンミャクジュク?…いや、カネメチック…」とうろ覚えの言葉を繰り返し、女房に報告しようとする。
ところが、報告になっておらず、言葉はますます混乱。「金明竹」が「きんめいちく」とも聞き取れず、あげく「紫檀の煙管筒」が「シダンのキザントン」とひどい崩れよう。これには女房も呆れ顔。

結局、何の道具の話だったのかも曖昧になり、品物の内容も分からず、すっかり話がこじれてしまう。だが、江戸と上方の言葉の違いが生む滑稽と、与太郎の人の良さに、女房もつい苦笑。後に旦那が戻ってきて事の顛末を聞き、皆で大笑いとなる。
――江戸と上方、道具と舌先、違いはあれども、そこにあるのは人情と笑い。言葉の行き違いが生む江戸のユーモア、そんな一席である。

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