「私の与太話」「日銀の2%と、わが家の財布」
テレビでは日銀が「物価上昇率2%」と繰り返している。しかし、スーパーへ行けば、食品は数年前より2割も3割も高くなった気がする。以前は五千円で済んだ買い物が、今では七千円近くになることもある。私は妻に言った。「日銀は2%と言っているが、スーパーの値札とはずいぶん違うじゃないか」。妻はレシートを見ながら答えた。「日銀の偉い人は、うちの買い物かごを見たことがないんじゃないの」。私は気になって、その2%の正体を調べることにした。

調べてみると、日銀の2%とは、前年と比べた1年間の物価上昇率の目標だった。例えば、2022年に100円だった商品が2025年には130円、2026年には132円60銭になったとする。最初から見れば32.6%も値上がりしているのに、直近1年間だけなら2%である。しかも、これは食品だけでなく、さまざまな商品やサービスを含めた物価全体の話だ。実際、食料品は2018年と比べ、2025年には約27%も高くなっている。なるほど、数字のからくりが少し分かってきた。

日銀が2%を目指すのは、デフレを防ぎ、賃金と物価が緩やかに上がる経済をつくるためだという。理屈は分かる。しかし、物価上昇率が2%に落ち着いても、すでに値上がりした食品が元の値段に戻るわけではない。年金が少し増えても、食費や光熱費がそれ以上に増えれば、暮らしは苦しくなる。私は妻に説明した。「つまり、日銀が見ているのは物価の上昇率で、俺たちが見ているのは財布の中身なんだ」。妻はうなずきながら、家計簿を開いた。

私は得意になって妻に言った。「ようやく分かったぞ。日銀の2%は経済政策の目標であって、国民の暮らしが豊かになったという数字じゃないんだ」。妻は家計簿を閉じて言った。「そんなこと、買い物をしていれば分かるわよ」。私は少々面白くない。「だが、日銀だって日本中の物価を調べて、ちゃんと計算しているんだぞ」。すると妻は財布を開き、小銭を数えながら言った。「日銀の計算が正しいのは分かったわ。でもね、あなた」。私は聞き返した。「何だい?」
「日銀の計算は合っていても、うちの家計は合わないのよ!」
