『宮沢賢治の詩と心象風景』第七回「雨ニモマケズ」
【原文】
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
【現代語訳文 】
雨にも負けず、
風にも負けず、
雪にも、夏の激しい暑さにも負けない、
健やかで丈夫な体を持ちたい。
欲を張らず、
決して腹を立てず、
いつも穏やかに笑っている。
一日に玄米を四合、
味噌と、ほんの少しの野菜を食べ、
飾らず、慎ましく、
静かに毎日を生きてゆく。

【原文】
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
【現代語訳文 】
あらゆる出来事に向き合うとき、
自分の損得や感情を先に置かず、
よく見て、よく聞き、
その意味をしっかりと理解する。
そして、知ったことを忘れずに心へ刻む。
野原の松林の陰にある、
小さな萱ぶきの小屋に住み、
世の騒がしさから少し離れて、
静かに人と世界を見つめながら暮らしている。

【原文】
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
【現代語訳文 】
東に病気の子どもがいれば、
そのそばへ行って、やさしく看病する。
西に疲れ果てた母がいれば、
その稲の束を代わりに背負う。
南に死を恐れる人がいれば、
「こわがらなくても大丈夫」と、静かに語りかける。
北に争いや裁判があれば、
「そんなことはつまらない。もうやめよう」と言う。
人の苦しみを見過ごさず、
求められる場所へ黙って歩いてゆく。

【原文】
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
【現代語訳文 】
日照りが続けば、
苦しむ人々を思って涙を流し、
冷たい夏には、
どうすることもできず、心配しながら歩き回る。
みんなからは役立たずと呼ばれ、
ほめられることもなく、
迷惑がられることもない。
目立つことを求めず、
ただ静かに人のために生きる。
私は、
そのような人になりたい。
