『宮沢賢治・光と風の物語』第十八回「ひかりの素足」第6話 弟との別れと帰還/6話
光の人に導かれ、一郎と楢夫は青く静かな湖と美しい野原に立っていた。そこには苦しみも寒さもなく、子どもたちは明るい顔で遊んでいた。一郎は、ようやく弟を救えたと思い、楢夫の手を強く握った。

しかし光の人は、一郎だけは元の世界へ帰らなければならないと告げた。楢夫はこの安らかな国に残るのだという。一郎は弟を一人にできないと訴えたが、楢夫は穏やかに笑い、「兄さん、心配しないで」と別れを受け入れた。

一郎が楢夫を抱きしめると、弟の姿は次第に白い光へ包まれていった。光の国や湖も遠ざかり、一郎は激しい悲しみの中で意識を失った。次に目を開けると、雪山で捜索に来た大人たちの声が聞こえていた。

救助された一郎は村へ帰ったが、楢夫は戻らなかった。それでも一郎の心には、光の国で見た弟の安らかな笑顔が残っていた。深い悲しみを抱えながらも、弟は光の中で穏やかに生きていると信じ、一郎は静かに日々を歩み始めた。
